《MUMEI》

「佐伯さんみたいな一流の方が俺の事知ってるなんて、もう嬉しくて舞い上がっちゃいます」



「ふふっ、何言ってんだか、どこの雑誌開いたって載っている坂井君の事知らないのはかなりヤバいよ、こっちこそ会ってみたかったから凄く嬉しい」



たまたま同じホテルに泊まっていて、チェックインする俺達一行を日中見かけていたらしい。






やはり佐伯さんはこの時間帯が空いているのを知っていて飲みにきたらしい。






佐伯さんの奢りで俺はジンフィズを飲みだし、佐伯さんは何やらオリジナルらしい深い緑色のカクテルを頼んだ。






シャワーを浴びてから来たのか気取らない髪型、軟かな素材のタンクトップにアールジーンのジーンズ。





それ程長くない茶髪で、筋肉はついているけど全体に細い体型。




身長は俺と同じ位っぽい、うん。



俺と同じ感じなのかな。




年齢が37だって聞いてちょっとびっくりした。




とても秀幸とタメに見えない。




完璧に整った甘い顔だちに全体に漂うセンスの良さ。




秀幸には悪いが真逆だ。




秀幸もちょっと服装位自分にあったの見つければ格好良くなる筈なんだけど…



いつも何処で見つけてくるのか分かんねーシャツを着ていて、でも口出しするのは悪い気がして黙っていた。




「へー、これから二十歳なんだ、良いね若いって」



「やっぱヤバいですよね、調子づきました」




さすがに煙草はとバッグにしまう。




「ははは、もー良いって、俺なんか中学生の時から吸ってるしさ、今更気にすんな?今日は保護者付きなんだしさ」





佐伯さんは優しく笑いながら自分のオイルライターの火を付け俺に向けた。




俺はなんだかスゲー嬉しいのと調子づいて、煙草を火に寄せた。




「何時から吸ってんの?」




「はぁ…、まだ何ヶ月前からなんですけど、すっかりこれがないと生きてられなくなりました」



「そう、で…恋人は?」





「恋…人…ですか、いませんよ」




また一瞬心臓が飛び跳ねた。



さっき秀幸の事思いだしたから余計。





――あの日、俺の勝手な言い分で別れて…あれから一ヶ月近く経過した。





だからと言ってぜんぜんめっちゃ好きなままだし、声聞きたくて年中電話しちゃってて、呆れられてるしで、しかもエッチしたくて堪んないしで…。




「じゃー好きな人は?」




「いますよ…、スッゲー好きな人…」






秀幸…、全然会ってないな…。






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