《MUMEI》
‡。面白い子。‡ひかりside.









「ひかり先生、3年生の階の戸締まりよろしくお願いします」





学年主任の先生に頼まれて、私は職員室をでた。






グラウンドからは、部活をやってる生徒たちの元気な声が聞こえてくる。






4階からは、吹奏楽部の素敵な演奏がきこえてきていた。




此の学校は部活がとても盛んらしくて、
数々の好成績を残している。




教師になって、初めての学校がこんなに凄い学校だとは思わなかった。






私は、3年生の階まで来るとまず1組から戸締まりを始めた。




此の学校の教室は綺麗だなぁ…




教育実習で行った学校は普通だったから、此の学校の教室に入った時はびっくりだった。





2組、3組と順番に戸締まりをして、次は4組。




教室のドアをゆっくりと開けると、
そこには1人の生徒の姿。





「あれ??棗くん……まだいたんだね」



「ひっひかり先生!!!!!」




棗くんはとても驚いている。


まさか、こんな時間に私が来ると思わなかったのかな??



私は、開いていた窓を閉める。


そういえば……



「棗くんは部活入ってないの??」


「あっはい…サッカー部に入ろうと思ったけど、部活に縛られんのが嫌だったから入らなかった」



「そうなんだ」




そういえば…聞いたことあるなぁ…。
女の子たちから。


"棗くんはサッカーが凄い上手"ってこと。



上手なのに入らないなんて、何だか勿体無いなぁ…。




「もうそろそろ、下校時間だから帰らないとダメだよ」



「はーい」




棗くんは鞄を持って立ち上がった。


私はそんな棗くんを廊下で待っていた。




棗くんの髪が、

夕陽に照らされて凄く綺麗に見えたのは

その時だったかな…。




棗くんが教室から出て、私はドアの戸締まりをする。




「じゃあ…また明日ね」



「あっ…はい」



私は、棗くんがそう言ったのを確認して、5組の方へと歩き出した。



そして、
少し間が空いてから…




「ひかり先生!!」




棗くんが私を呼んだので、振り返る。




「何??」




棗くんは、私と目を合わせずに喋り出す。



「あの……俺、英語苦手で……教えてほしいんですけど…」



私は、小さな声でそんなことを言う棗くんが可笑しくて少し笑った。



そして、暫く考え込んでから…



「うーん…じゃあ、来週にテストがあるから……その前にある勉強会やる時に英語を選んでくれたら教えてあげるよ」



私がそう言うと棗くんは嬉しそうに、




「マジ!?ですか!?」



って。




「はい、マジです(笑)」




棗くんは嬉しそうに笑いながら


「俺、行きます!!それじゃ!!」



って言ったから私は



「バイバイ」って。




棗くんは、私に背を向けて走り出す。





面白い子だなぁ…。





私はそんなことを思いながらも残りの教室の戸締まりをした。











..

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