《MUMEI》
「佐伯さんは…恋人居るんですか?」
「勿論いるよ、てゆうか今一緒に泊まってるし」
「え?良いんですか、ここに居て」
「はは、俺達はもう長い付き合いだからね、向こうも今頃行きつけのバーで飲んでるんじゃないかな」
佐伯さんも煙草を吹かしだした。
何故か秀幸の仕草とだぶる。
…全然似てねーのに…。
「そうなんだ…」
「じゃー坂井君は今片思い中なの?格好良いんだから何とかなるんじゃないの?」
「そんな俺なんか格好良くなんてないですよ、つか多分まだ両想いだと思うし…、はあ…」
切なくなるからこの質問キツイ。
それに初対面の人に男同士の恋話はいきなり語れねーってば。
「ふーん、なんか複雑そうだね、俺もいろんな意味で複雑なんだよ、聞きたい?」
「ちょっと興味ひきますね、いいんですか?俺に話して…」
「うん、なんか坂井君に聞いて貰いたくなっちゃって…」
「はは、でももうすぐ閉店みたいですねー」
まだ俺達が居るのにボックス席の照明が落とされてしまっている。
「じゃー俺の部屋で飲み直そうか」
▽
佐伯さんと俺はバーを出た。
俺は佐伯さんの後ろを黙って着いて行く。
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