《MUMEI》

「佐伯さんは…恋人居るんですか?」




「勿論いるよ、てゆうか今一緒に泊まってるし」




「え?良いんですか、ここに居て」




「はは、俺達はもう長い付き合いだからね、向こうも今頃行きつけのバーで飲んでるんじゃないかな」





佐伯さんも煙草を吹かしだした。





何故か秀幸の仕草とだぶる。




…全然似てねーのに…。




「そうなんだ…」





「じゃー坂井君は今片思い中なの?格好良いんだから何とかなるんじゃないの?」




「そんな俺なんか格好良くなんてないですよ、つか多分まだ両想いだと思うし…、はあ…」





切なくなるからこの質問キツイ。




それに初対面の人に男同士の恋話はいきなり語れねーってば。




「ふーん、なんか複雑そうだね、俺もいろんな意味で複雑なんだよ、聞きたい?」




「ちょっと興味ひきますね、いいんですか?俺に話して…」



「うん、なんか坂井君に聞いて貰いたくなっちゃって…」




「はは、でももうすぐ閉店みたいですねー」





まだ俺達が居るのにボックス席の照明が落とされてしまっている。




「じゃー俺の部屋で飲み直そうか」






佐伯さんと俺はバーを出た。





俺は佐伯さんの後ろを黙って着いて行く。








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