《MUMEI》 俺の両親は、俺が小学3年の今日、死んだ。 交通事故だった。 梅雨どきの、よくある交通事故。 俺の両親が乗った乗用車は、 何かを避けたようなブレーキの痕を残し、 降り続いた雨で増水した河に落ちた。 警察や周りの大人は、 『ネコか何かが飛び出して、それを避けたんだろう』 と言ったが、 俺はわかる。 ハンドルを握った父は、ネコを避けたんじゃない。 助手席に座った母が最期に見たのも、ネコなんかじゃない。 …父は『あれ』を避け、 母は最期に『あれ』を見た。 俺はわかる。 ―…だって俺も、両親と同じように、 『あれ』が視えるから。 両親と同じように、 ―…『呪われて』いるから。 前へ |次へ |
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