《MUMEI》 優流*弘毅(…!) 引っ掛かった信号の反対側に、男がいた。 腕時計を眺め、スーツは完璧に着こなした、男。 俺はそいつを見て、それが誰か理解した瞬間、目の前が真っ赤になった気がした。 ***** 『D公園の鯉に餌やりにでも……』 帰路についた俺の脳裏に唐突に優流の言葉が蘇る。 大したことを言ったわけではない、なのに何故か引っ掛かる。 何故引っ掛かる? 引っ掛かるのは何故? 自分の中を探っても無駄なことは分かっている。 「…ま、そんな気分のときもあるよな。」 そしていつも通りに、投げ出す。 「…でも、D公園?」 らしくもなく、また拾い上げて、一人呟いた。 そして気づけば、 俺の足はD公園へと歩みを進めていた。 前へ |次へ |
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