《MUMEI》

「外の世界は広いですよ。」


小鳥は静かに話します。


「広い?」


ねこはベランダから出た事がありません。
そのため、『広い』とはどういうものか、想像できません。


「ええ、とても広いのです。例えば、ねこさんが毎日見ている空。この空は何処まで続いていると思いますか?」




【ベランダ】という限られた地でも、いつも思っていた事があります。



のんびり、ゆっくり流れてくる白い雲。
今日の様に黒い雨雲がひしめき合うように、それでもゆっくり流れていく雲を見上げては、こう感じていました。



「空はどこまでも…。永遠に続いているんだと思います。」

「そう。空は永遠です。私達がこの地にいる以上、ずっと空は私達の上にあるのです。」

「それはつまり、どういう事ですか?」

「それはつまり、空が有る限り、地上の世界も同じ様に広がっているという事です。」

「とても広いんですね。」


ベランダしか知らないねこには、想像できているのでしょうか。



「私も地上全てを知っている訳ではありません。」


小鳥はゆっくり話します。

「ただ、一つ言える事は、毎日新しい何かが見つかるという事です。」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫