《MUMEI》

その後、岡ヤンは容体の安定を待って両親の実家のある大阪へ転居し、療養することになった。

 

同年12月…

 

岡ヤンとの別れの時は、木枯らし吹きすさぶ冬の朝だった…。

 

『じゃ……元気でな…』

 

兄貴は寂しげに呼びかけた…。

 

頭蓋骨を装身具で固定され、喉元から管を生やした岡ヤンは、眠ったまま兄貴の呼びかけに応えることは無かった。



オレはかける言葉も見付からず、ストレッチャーの上に横たわる痛々しい姿を目に焼きつけるだけだった。

 

兄貴とオレは、岡ヤンを乗せた車を見えなくなるまで見送った。

 

黙ったまま佇むオレ達の肩に、灰色の空から冷たい雨が落ちてきて、二人の涙を隠してくれた…。

 

 

岡ヤンとは、それ以来会っていない………。

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