《MUMEI》
楽、臆、異の奇妙関係
この県、熊本県ははっきり言って、東京や関東地方の人から見れば"イナカ"と呼ばれる類の県だ。

なんか未だに時給550円で雇おうとさえするコンビニがあったり、カップラーメンが最高38円で安売してあったり、見渡す限り水田だったりと…言い出すときりがない位に………。

"遅れている"

…つまり…何が言いたいのかというと…こんなイナカじゃあ、泥棒すら居ないワケ…ナンダケド…。

事実、借りている部屋の中からなんだか言い争っているような声が聞こえる。

…声は…男と女か、もし泥棒なら、叩きのめして警察に連れて行く…

と、幾らか慎重にドアに手をかけながら、

…やるなら不意をつくしかないな…

季紫はそう思い、

"必要以上の力でドアを叩き割った"

そのまま季紫は動きを止めることなく、二人組のゼロ距離まで近寄った。

叩き割って近寄るまで、季紫は2秒掛かっていない。そのままねじ伏せようとして─────季紫は動きを止めた。

いや…、

"強制的に止められた"

気絶した訳でもなく、逆にねじ伏せられたわけでもない。

意識はあるが、"動けない"まるで季紫の周りだけ時間が止まってしまったように、

───不意に二人組の男の方から声が掛かった。

「危な!?危ないよ!?あと1秒遅かったら骨とか折れてるよ!?何何何!?新手の"ごうとう"って奴?人間界にたまに居るっていうあれ!?」

その男は身長が大体180前後の何処にでも居るような奴だったが…服装が異様だった。

教会とかの神父が纏うような純白の服を纏っており髪も純白で、かといって全て純白ではなく下半身に纏う長いズボンは真逆の全てを吸い込むような漆黒だった。

神父のようでどこかかけ離れている。しかもなんだか異様にテンションが高い。

そしてその神父?の隣には無言でこちらを凝視している、神父とは逆のイメージを受ける女がいた。

こちらは、漆黒のドレスに髪は吸い込むような黒で、ドレスは長く、足が見えていない。頭にはどこぞの姫が身に着けるようなティアラが着いているが、…色がおかしい、輝く白銀等ではなく、また光る漆黒でもない、完全な赤、見る者を魅了するような、取り憑かれてしまうような赤だった。

一見どこかの姫に見えなくもない、不思議な女だった。こちらは冷静、悪くいえばテンションが低い。

季紫はこの二人を一瞥すると、体は動かないので、質問することにした。

「…お前ら…空き巣か?泥棒か?どちらにせよ…ここで何してんだ?」

「あー…うん。ソレについては僕はあまり悪くないよ?だいたいが着く場所は選べないし…。」

「…?選ぶ?何言ってんだ?」

「ああ!言ってなかった?僕達、それぞれ天使と魔族だよ?」

後ろで女の方もコクコクと頷いている。

そして一言も喋らなかった女が初めて言葉を口にしたが…

「私が魔族の姫で、彼が天使だよっ!♪ちなみに私と彼は婚約してるの!」

季紫は素直に落胆した。何故なら冷静で少しは話せると思った奴が、天使と言われた奴同様に、テンションが高いからだ、

というか…それ以前に…

「今婚約って言った?」

「そうだよー?」

「おい、待つんだいや待ってください!?その話はまだ決まってないよな?」

「えー?だって私を人間界まで連れて来てくれたじゃない!?」
何やらギャーギャー騒ぎ出してしまった、とりあえず様子見する事にした季紫はしばらく傍観する事に徹した。
いつ終わるのだろうか…

†続く†

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