《MUMEI》
恨み
芝生のところに先輩と腰を落ち着けた。

隣に大きな存在は、不思議と僕を饒舌にした。

「僕の母は昔は美人で通ってたらしいんです」

「ふぅん。だから可愛い顔してるんだ」

「……話の腰を折らないでください。それと、可愛いって言わないでください!」

「わ…わかったから話続けて」

僕はつい興奮してしまって恥ずかしくなった。顔の熱を逃がすように深呼吸してから話を続ける。

「で……僕には最初、それが信じられませんでした。何故なら――母の顔は歪んでいたからです」

「歪んでた?」

「ハイ……。左の頬骨が上に盛り上がるようにしてです。明らかに不自然な歪み方だったし、昔は美人だったから父もよく母を問いつめてました。母は口を割らなかったけど」

「それで?」

促されるようにして僕は話を進める。

「それで…とうとう母が口を開きました。僕は隠れて聞いていたからちゃんと聞こえなかったんですけど、母は『殴られたのよ』って言いました」




『殴られたのよ……、ミズキくんに』

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