《MUMEI》

けれど、小鳥は哀しい顔で言います。



「ねこさん、それは私では出来ません。」

「どうしてっ!?」

「私のくちばしは小さく、力もありません。ですから私には無理なのです。」

「そんな…」


ねこはガックリと肩を落とし、大きな目に涙を溜めます。
でも、決して小鳥前では泣きません。

泣いてしまっては小鳥を責めてしまうからです。



「ねこさん、力になれなくてごめんなさい…」

「いえ、いいんです。僕は何年も此処で暮らしてきているんです。
…外に出たいなんて、今更な話ですから。」


ねこは涙をグッと堪え、無理に笑顔で答えます。


「ねこさん…」

「無理に引き止めて悪かったですね。
さぁもう行ってください。でないと、僕はあなたを食べちゃいますよ?」


ねこが脅すように言うと、小鳥は慌てた様子で翼を羽ばたかせ、ねこの頭上へと舞い上がりました。


「ねこさん、本当にごめんなさい。でも、私が大きくなったらまた来ます。
その時はきっとその縄を断ち切る事ができますから!」




小鳥はそう言い残すと、遠い空へと消えていきました。

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