《MUMEI》

「お疲れ〜
ごめんね、待った?」

高山は、俺達の姿を見付けると、足早に俺達の向かい側に座った。

「いや、大丈夫だよ」

時刻は、待ち合わせ五分前だった。

俺は仕事帰りにここに直行したし、祐希も俺に気を使って早目に来ていただけだ。

「良かった。えっと、一応、はじめまして、でいいですよね?
仲村君の中学の同級生の高山 志穂です」
「…どうも、屋代 祐希です」

落ち着いた丁寧な口調で、深々とお辞儀しながら挨拶する高山に、祐希が軽く頭を下げながら、自己紹介する。

「高山さんて…」
「はい?」

「あの、高山 秀(たかやま ひで)の妹なんだって?」
(げ?!)

祐希の何気ない一言に、俺は恐る恐る高山を見る。

昔は、この一言で拳が飛んできた。

「そうですよ」

高山は、先程と変わらぬ口調で微笑みながら言った。
(大人になったなぁー)

俺がしみじみしていると、
「先輩達が話してた、『美人の妹』って高山さんの事?」

「祐希!」

俺は思わず祐希の口を塞いだ。

それは、禁句第二弾だ。

昔はこの一言で、蹴りが飛んできた。

高山は今日スカートだから、大丈夫だと思うが…

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