《MUMEI》

「俺、『たかまる』に兄ちゃんに会わせてって言ったら殴られた」

「俺、妹紹介してって言ったら蹴られた」

「あたし、高山さんちは皆すごいねって褒めたのに、はたかれたよ」

話題は、段々そんな方向に…

「離婚って、『たかまる』の暴力じゃねぇ?」

誰かが言うと、きっとそうだよと何人かがうなずく。

(何か…)

別に、当時は何とも思わなかったけど、こういう話は、嫌な感じがした。

俺は、別に、正義の味方じゃない。

無い、けど…


「あのさ、じき高山来るし、そろそろ、そういう話やめない?」

俺の言葉に、皆、キョトンとした。

(うわ〜)

言わなきゃ良かったと、後悔した。

「お前…」

何カッコつけてんだと言おうとした男の口が、ポカンと開いたままになった。

(…え?)

俺は、男の向いている方を見る。

一同、ポカーン。

「え〜と!」

健志が、咳払いを一つしてから、隣にいる『女性』を紹介した。

「お待たせ。高山さん、連れてきたよ」

と―

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