《MUMEI》

「俺の右隣の部屋が稲葉の部屋なんだ。だから202号室だよ。」

「そうなんですか。」

私と探し屋の知り合いらしい男は、探し屋の部屋の前まできた。


ピーンポーン

男が押したチャイムが部屋に響いているのが、外からでも分かった。

すると、少ししてからドアの向こうからゆっくり、ドタペタドタペタとこっちに誰かが移動する音が聞こえ、ドアが開いた。

「どちらさま?」

昨日聞いたばっかりの眠たそうな声が聞こえ、探し屋の頭だけがドアの中から出てきた。


変わらず汚い黒髪と一緒に、あの甘い匂いがした。

「あっ…。」

うっとうしい前髪のすきまから見えたらしい私を見て、少し驚いたような声を出した。


「どうも…。」

と私はペコリと軽くお辞儀をした。


「稲葉に可愛い来客だよ。」

「あれ?浅田いたの?」

「お前、それが友達に対する態度かよ。」

「ごめんごめん。立ち話もなんだし、家ん中入る?」

「あ…はい。」

「浅田もどう?」

「いいのかよ?俺も居て。」

「別にいいよね?」

「はい。」

「…じゃあお邪魔するよ。」

「どうぞ、どうぞ。」


探し屋はドアを大きく開いて私たちを招き入れた。

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