《MUMEI》 夏の思い出ねぇ、今度のキャンプでさ、キャンプファイヤーやろうよ 私は何故そう言ったのだろうか。 本当はやりたくなかった。 でも、私の中の何かが、言ったのだ。 炎は綺麗だ、と。 当時、私は綺麗な物が好きだった。 いや、今もだが。 炎は綺麗だと言われると、すぐに日曜日に行く予定のキャンプのことを思い出した。 父に言ったのだ。 キャンプファイヤーをしよう、と。 それを聞いた父は、それは楽しそうだ、と即承知した。 喜ぶ幼き日の私。 霧のように霞んだ、しかし忘れられない記憶。 ◇ 火は揺れる。 響くのは楽しげな声ではなく、天を穿つ断末魔。 少女が、たった独りで、そこに立っている。 周りには、大小様々な黒い塊。 異臭を放つそれは、かつて人間だった物。 キャンプファイヤーは力強く、だが儚く燃え続ける。 少女の口は禍々しく歪み。 独りで、楽しげに笑っていた。 前へ |次へ |
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