《MUMEI》

「坂井君は俳優でやってくの?」




「うーん…正直なところ今回のドラマの仕事で合わないんじゃないかって悟って。だからまた暫くモデルで頑張ってみて、じっくりやりたい事見つけてみようって考えたんです。あれもこれもにしちゃうと全部ダメにしちゃいそうだし…」




「そう?ドラマの中の坂井君初めてのわりに上手かったけど…、でもこれだけ綺麗でスタイルもいいんだしモデルだけってゆうのも有かもね、海外のコレクションのオーディションも挑戦していくの?」



「正直ここまできたら挑戦したいですね、どこまで自分がこの世界で通じるのか限界の天井に頭ぶつけてみたいし」




「はは、そっかぁ…」





結構貴方の息子さん確りしてるよ。





このまま流行りの人気にのって俳優やって脱モデルもして、ついでに歌でも歌っちゃえば一生ちまちまこの世界でやれそうな素質はあるのに。





まーそれしちゃったら俳優にもなりきれないモデルでもない、歌もアーティストには敵わないから半端、何の特技があるのか分かんねー何が言いたいのか分かんねーマルチタレントモドキにしかならないだろうけど。





ぬるま湯より自分を探そうとする姿勢、やっぱり貴方の息子だね。






「あの、佐伯さんの彼女まだ帰ってこないんですか?そろそろなら俺邪魔じゃないですか?」




「あー多分そろそろ帰って来ると思うけど気にしないで、別に合わせたって平気だし、それに多分向こうも坂井君に会いたいと思うから」





「そうなんですか?
彼女も俺の事知ってるんだ…」



「そりゃ、知ってるさ…、あとね、彼女じゃなくて彼氏だから」



「え…」





もー露骨にびっくりすんなって。
裕斗君だって大好きな人男でしょ。





「軽蔑する?」




「い、いえ…全然」




――でしょ。君は出来る立場じゃないし、しないのは分かっている。





「もう13年も付き合っててね、すっかり俺達は夫婦みたいなもんだから…、

でも彼妻子持ちだったからさ、始めは略奪から始まった関係なんだよ」





裕斗君の…彼と同じ深い眼を見ながら告白してやる。





裕斗君の眼が僅かに揺らいだのが分かった…。




すると…





ガチャ…





部屋の扉の鍵が開く音がした。









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