《MUMEI》

俺と同じ河崎中央大学に合格した、と奈々から連絡があって以来、俺は少しずつ部屋の片付けを始めた。

隣に知り合いが住むということになれば何かの拍子に部屋の中に入って来る、なんてのは当然のように予想される。

なので出来れば標準的な部屋の清潔さを保って、いつ見られても恥ずかしくないようにはしておきたい。そう思ってからの行動であった。

逆に言えば、今の部屋の状況を見られれば恥ずかしいということだ。

狭い部屋の大半はこの散らかったゴミのせいでもあるような気がする。唯一綺麗なのはベッドの上ぐらいだろうか。がさつな性格な癖に、何故かベッドの上には物を置かない、ベッドの上ではおやつは食べない、という超部分的几帳面さを持っていたのでシーツは綺麗なものだった。

さて、そろそろ本格的に始めよう。景気付けにハードロックをチョイスし、普段よりボリュームを上げて、そして重い腰を動かす。

まず手をつけなければならないのは、床に散乱した雑誌、服、そしていつ食べたか分からなくなったコンビニで買った弁当の空容器だ。

手際良く分けていく。空の弁当箱のふちを持った時にヌルリと気持ち悪い感触に襲われた。慌てて手を洗いながら、今更ながらよくこんな部屋に住めるな俺、と馬鹿な感心をした。

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