《MUMEI》

藤原の第一声は「この部屋広くなった?」だった。

マジシャンじゃあるまいし、そんな芸当出来る訳はない。しかし、藤原も整理したことに気がつかないほど、鈍感な人間じゃない。ただ、素直に綺麗に片付けたなと言わないだけだ。

俺のどうだ、という誇らしい態度とは裏腹に、藤原は「普通かなこれが」なんて返しに少し不満だったが、この状態を普通にしないとな、とやたらと前向きな意見が俺の中で芽生えたのは事実だった。

日頃からという事がどれだけ難しいか、約20年の歳月で身を持って体験している。しかし今度は違うぞという決意だけはしっかりしておこう。

藤原が俺の部屋に来たのは特に用があった訳ではないらしい。強いて言えば漫画を読みに来たと言えばいいのかな。

いつも通りベッドに寝転がって読み始める。

それからは驚くほどいつもと同じだった。俺もいつも通りゲームをやり始める。

そして時々話しをする。

今日の話しはやはり、この部屋についてだった。

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