《MUMEI》

「家ってさ、お前にとって何?」

と逆に質問で返された。それは今までに一度も考えたことがないことだった。

「そりゃ家ってのは、休むところだろ。体を休める、心を休める場所。それより1番はやっぱり、生活の全ての場所がここにあるといっていい。飯を食ったり、風呂に入ったり。人間らしく生きる為のものがここにあるってことだろうよ」

至ってまともに答えた。思ったことをそのまま言ったつもりだ。考えたこともないことだったが、あえて言うならこの答えが素直な俺の考えだ。

「じゃあそれが出来ない場合はどうしたら良い?」

ナゾナゾか何かなのだろうかこれは。

「どうして出来ないんだ?だからその理由が知りたいんだけど」

「理由はない。でも出来ない。そういうことだってあるだろ」

理由はないが不満はあるか………俺には難しく、なんと返事を返して良いのかわからなかった。

ただ、藤原は自分の家というものに不満を感じているというのはわかった。
そしてその理由を俺に話すつもりはないのだろうと………そう思った。

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