《MUMEI》 幕間避難所となっているテントから少し離れた場所、そこでセイは一羽の鷹を相手にしていた。 「報告は以上。」 今までの話をまとめるようにセイが締めくくる。 「そっか〜・・枢機卿は死亡、資料は瓦礫の下で解らず仕舞いって・・何の冗談!!」 さも当然といった様子でヒトの言葉を話す鷹。 その翼には二筋の白い線が走っている以外は特に変わったところは無い。 「仕方ないだろ!こっちだって忙しかったんだよ。」 逆ギレムード満載でセイが鷹に向かって怒鳴る。 「御下命は、教会内で起こっている不自然な魔力の流れ及び失踪者の調査だったはずだよね、清・深緑。」 「調査はしたし、その報告だってしただろ。」 「清が見たってだけで証拠書類もなし、失踪したヒトも見つからなかったって・・・それじゃ何の意味もないって!!」 器用に鷹は頭を抱えるような仕草をする。 「一応・・・あることはあるんだ、けどな・・その・・」 言い難そうに口籠もるセイ。 「解った、直接聞くよ。とにかくしばらくは守護騎士と一緒に行動して。私もそっちに向かってる途中だから。」 「ゴメン、禾憐。」 軽く頭を下げ謝罪するセイ。 「いいよ、いつもの事だし。あ・・それから未確認だけど、コーリア教の軍隊がそっちに向かってるって情報もあるから気をつけて。危なそうならネスフェリン皇国の国土に非難させて良いって許可は貰ってるよ。」 鷹が融けていく。 「・・・・誰か見てたらオレ変人だよな・・」 とりあえず、そういった感じで歩き出すセイ。 「そうか・・ご苦労、下がって休んでてくれ。」 ほぼ全身を包帯でグルグル巻きにされているバンプが守護騎士からの被害報告を聞いて、悔しげな表情を浮かべている。 「今、出来ることをやるだけ・・か。」 そう呟き、テントの外に出る。 「バンプ副団長だよな?」 外に出た途端、セイに話しかけられた。 「お前は?」 「あ〜・・ネスフェリン皇国所属、清・深緑だ。」 「・・・何故ココに居るのかって疑問は置いておく、何の用だ。」 相手に敵意が無いことを確認した上でバンプは質問をする。 「話が早くて助かる。皇国からの伝達でココにコーリア教の軍隊が向かってるらしい。目的は不明。後、皇国から救援目的で軍が動いている。団長の方は怪我で意識不明だし、アンタに伝えておくのが一番妥当だと思ったから知らせに来たんだが・・」 セイが何かに気が付いたように後ろに振り返る。 「狂気の深淵・・」 「ほぅ、我に気が付くとは。」 ハンディングはセイの後方10メートルは離れた位置に佇んでいた。 「・・何かあったのか?」 「そこのモノが言っておった通りのことだ。遠目の術で確認した上、リアムが視認している。」 「数は?」 「2万近く。詳細は妨害が激しく確認できなかったが・・妨害をかけている時点で救助目的ではあるまい。街の結界が健在ならば籠城戦も可能だが・・現段階では撤退が最良であろう。」 ハンディングの返答に苦々しく頷くバンプ。 先の報告で戦える人員数も確認している。 「清・深緑だったな。皇国は救助目的で軍を動かしてるんだな?」 「あぁ。」 即座に頷くセイ。 「そちらも確認した。妨害は一切しておらぬし・・」 「副団長!!」 守護騎士が走りこんでくる。 前へ |次へ |
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