《MUMEI》
皇国軍
「何だ?」
「お話中申し訳ありません。ネスフェリン皇国より通信です。」
周囲に居るセイとハンディングに視線をやる守護騎士。
「構わない、続けろ。」
手元の書類を見ながら守護騎士は続ける。
「「当方、ネスフェリン皇国近衛騎士団。そちらの正確な位置、及び被害状況を教えられたし。」との事です。」
近衛騎士団と言う一言にセイが固まる。
「解った、「こちらはリーベル守護騎士団、副団長バンプ。現在、目的不明の武装集団が迫って来ている為、そちらで調べてほしい」そう返答をしておいてくれ。」
メモを取り終えた守護騎士は一礼し、即座に駆けていった。
「セイ、一緒に来てくれ。」
簡易通信所へと走るバンプ。それに続くセイ。
「ふむ・・ならば我は適当に動くとするか。」
その呟きが消えぬうちぬハンディングの姿はその場から消えていた。

「陛下、守護騎士からの返答がありました。」
騎馬上の女性に合わせて行軍しながら報告するネスフェリン皇国、近衛騎士の一人。
「そうですか、それで状況は?」
「は、どうやらリーベル近郊の林に避難しているようですが、目的不明の武装集団が近づいている為、調べてほしいとのことです。」
金髪に先の尖った耳、真紅の瞳・・彼女はネスフェリン皇国を治める女帝ロゼ・シオス。
周囲には皇国の国旗の他、近衛騎士団を示す軍旗が掲げられていた。
「オデッセ、どう見ます?」
傍らに追従してきている男に声をかける。
「こちらで保護するべきだと。細かい状況がわからない以上、コーリアの軍隊は我々だけで打破するべきです。」
横に並ぶように馬を進める。
炎のような赤い髪が特徴的な青年。彼の名はオデッセ・クーン。若くしてネスフェリン皇国の近衛騎士団の長を務める魔族の男である。
「コーリアの軍は救援目的では無いと?」
「無論です。リーベルはフィリアス教が広まっている地、襲撃する事はあっても救援に動くとは考えられません。」
迷い無く返答するオデッセ。
「解りました、では私が3千を率いて先行しコーリアの軍を抑えます。貴方は残った5千を率いてリ−ベルの住人と合流後、本国へ撤退、防衛の用意を整えておきなさい。」
ロゼは迷いを断ち切るように頷き、命令を下す。
「危険過ぎます、陛下の身に何かあれば・・」
「時間を稼ぐだけの戦いなら貴方よりも私の方が得意です。危険だと判断した場合は即座に撤退しますし、貴方ならリーベルの住人と撤退している最中であれこちらの状況に合わせて臨機応変に動けると判断したのですが・・何か不満な点でも?」
「・・ご期待に添うよう全力を尽します。」
その返事に満足したのか、ロゼは軍を動かすべく声を上げる。
「第一部隊から第三部隊までは私に続きなさい!!これより全速でリーベルへと向かいます!!」
凛っとした声が響き、軍が二つに分かれる。
「御武運を。」
オデッセの言葉に振り返ると、
「頼みましたよ。」
その一言を残し馬を疾走させていく。

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