《MUMEI》

奈々が下見に来ると言っていた土曜日までには、部屋は完全に綺麗になっていた。

これなら彼女いわく頼りになる先輩、という威厳も保たれるだろう。

待ち合わせ場所である河崎駅に向かう。車を持ち始めてから駅に行く機会はめっきり減っていたので、駅周辺が懐かしく感じられる。休日ということもあって実に人が多い。小さい子供を連れた家族がやたらに目に入る。調度春休みの最中だ。どこかに旅行にでも行くのであろう。ちなみに遠方からこちらに来るというのはあまりないらしい。観光名所というのが悲しいことにないからだ。

奈々にこの辺りをいろいろと連れていってやると言ったが、後々になっていったいどこに連れて行けばいいのだろうと、あれこれ悩んだ。結局めぼしい場所を探すのにインターネットを見るしまつだ。

ここに住み始めて一年。はっきり言ってこの町を知り尽くしているとは口が裂けてもいえない。

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