《MUMEI》

まだ会うかどうかの返事は貰ってない状況での再会、そして…





この二人と共に俺がいる…。








二人はソファに向かいあわせで座った。



裕斗君は秀幸に聞いていた、想像していた子供っぽいイメージとは一変した。



怒ったり、取り乱したり、くってかかる様子も何もなく、意外と落ち着いた対応をしている。





俺がまた作った水割りを素直に受け取り、父親に一応断ってから煙草を吸いだした。





しかしさっきまで見せていたあどけなさが全く綺麗に消え去り、がらりと大人びた雰囲気に変貌した。





逃げずに正面から一人の男として、父親と向き合う…そんな気合いの入った覚悟。






そして俺に対する態度も変わった。どこか甘えを含んだ対応が一変し完全に壁を作られた。






「久し振りだな、すっかり大人になった」




「父さんは…あまり変わりませんね」



裕斗君は少しだけ笑い、うつ向きかげんのまま灰皿に灰を落とした。



シェスターも煙草を口にくわえた、すると裕斗君は自前のライターをすっとごく自然な仕草で差し出し、火をともした。





シェスターは一瞬動きが止まったが、ふと初めて少しだけ笑い、かがんで煙草の先を裕斗君の火にひたした。








――一瞬刻が止まったかの様。





薄暗いオレンジ色の空間の中、最近一段と渋さを増した男と、絵に描いた様な美青年。





かなり久し振りの再会の筈なのに、決して自分には立ち入る事の出来ない、特別な雰囲気を醸し出している。







何だかイライラする…







嫉妬…かよ。







俺は二人に聞こえない様ゆっくりと息を吐き、ソファからカウンターの椅子に移動し二人に背を向けた。






グラスに氷を入れ、バーボンの小瓶を一気に全て注いでロックで口に含む。




胃が焼ける様に熱いのが、今は最高に心地よい。





嫉妬…か…。




はは、最高。






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