《MUMEI》
到着
「みんな揃ったあ〜?」
範子が校庭の真ん中で腕をブンブン振っている。 「ウン、揃ったみたいだよっ!」
元気な声で、私は答えた。
「じゃあ、バス停に行くぞ」
先生が先頭に立って、私達は歩き始めた。
期待で胸を膨らませて…。



『次は暗花村。次は暗花村でございます』
聞こえてきたアナウンスの女性の声で、私ははっきり目をさました。
「茅乃ちゃーん、ついたよー」
熟睡中の茅乃の肩を何度も揺さぶる。
ようやく茅乃が目をさました。
「…う〜ん」
何時間走ったのだろうか。外を見ると、夕日がほとんど隠れていた。
「なんですの?この村は。こんな田舎初めてですわ」
出た。
舞子の文句攻撃。
「蘿野さん」
私が注意すると、舞子は不満げな顔で、口を閉じた。
「え〜と、この村のホテルって〜、何処にあるんですか〜?」
茅乃が首を傾げながら先生に尋ねる。
「もう少し、歩けばつく」
先生はそういって、歩きだした。後に、私達がつづく。

約一時間後、先生が足を止めた。
「…ここだ」
見上げると、古そうな建物がそびえている。
「…先生、失礼ですが…」
舞子が口を開いた。
「こんなところに泊まられるなんて、先生の懐は大丈夫ですの?手持ちが少ないのならいくらでもお貸ししますわよ」
また、そんなことを!と私が突っ込む前に、先生が言った。
「蘿野…金の問題じゃなく…」
先生が続けた。
「暗花村にはここしかホテルが無いんだ」
すぐさま舞子が睨むような顔で言った。
「じゃあなんでそんな貧乏な村に泊まりますの!?私、嫌ですわよ!!」
舞子の怒声に驚き、辺りはシンとなる。
私は舞子を睨み付け、
「そんなに嫌なら、蘿野さんだけ帰ればいいじゃん?」
と言った。
舞子は何かいいかけたが言うのを止め、口を閉じた。
「行こ?部屋とか決めなきゃ」
と私は言い、扉を開けた。 「いらっしゃいませ」
先生が受付の人と手続きを済ませ、私達の元へ戻ってきた。
「…部屋、決めるぞ」

私がクジを作り、それで皆の部屋を決めた。
「あ、私、釦と同じ部屋!釦ヨロシク♪」
範子が笑顔で私に言った。
「こっちこそこそヨロシク!」
続いて茅乃と舞子もクジを引いた。
「私茅乃さんと同じですわね」
舞子が言う。
「よ、よろしくね蘿野さん」
茅乃がおどおどしながら言った。


皆無邪気な笑顔で、キャイキャイ騒いでいる。 もうすぐ、最初の被害者が出るとも知らずに。

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