《MUMEI》 Child場にそぐわないモノには人間は過敏だ。 そのツインテールのメイドもそうだった。 「ローズ、肌が焼けてしまうよ。」 その一言で片割れははだけた布を頭から被り直しツインテールをしまい込む動作をした。 相棒よりかは親子のような雰囲気だ。 砂漠の中にローズと呼ばれるメイドとそれを諭す全身布で肌を隠した二人。 検問に引っ掛からない訳が無かった。 「だから、ロイ様は私の王子様でローズはロイ様のメイドなのです。」 ローズは身元を聞けばそれの一点張りで、ロイは言葉どころか体中を覆う布さえ脱がない。 「だから、王子なら国の証明書は無いのか?」 半ば頭を抱えて検問員は問うた。 何度目の質問だろうか。 「私の国は訳あって今、国境さえ曖昧なのです。どうか四日だけ置いてくれませんか。」 ロイが口を開いた。身長のわりに声はそこまで低くはない。 想像より若いことが分かった。 ロイの口調に荒々しさは微塵も感じられなかったが、自然と言うことを聞きたくなるような響きだ。 検問員は此処で二人を追い出すことも出来たのだが断る理由も見付からなかったので通すことにした。 これを職務怠慢、または諦めとも言う。 「では、王国にようこそ」 いい加減な検問を終えて煉瓦作りの大門を潜り、土壁の建物が続く王国に二人は入る。 賑わしさはなく、殺伐とした国だった。 「ロイ様、宿は一つしかないのですね。」 王国の地図を広げながらローズは宿の道を何度も確かめた。 数々の国を旅した者なら商店街が囲われ突き当たりに城が建っているような印象を受けるだろう。 「ローズ、宿の前に王様に会いに行かなきゃ。 王子のマナーだ。」 ロイは周りと同じような土壁の城を見上げる。 前へ |次へ |
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