《MUMEI》

『お前、あれから高山に会った?』


俺は、健志の言葉にドキッとしながらも…


「メール来て、一回飲みに行ったよ」


と答えた。


「それがどうかしたか?」
『ん〜、同級会の時に高山とメルアド交換した連中が、高山から返信来ないって俺に相談に来てさ〜』
「そうなんだ」


(連絡先訊いてきた連中に、ニコニコしながら、対応してたのにな)


ちょっと意外だった。


『やっぱり慎が本命か〜』「何だよそれ」

(あんな提案しといて、それは無いだろう)


…とは、健志には言えないが。


『鈍いよな、慎は』
「は?ありえないだろ」


即座に否定した。


『まぁ、たまにはお前もヤローとばかりいないで、女とも遊べよ』

ギクリ。


「な、何だよ、それ?」
『お前、いっつも親友優先じゃん?…アーヤシー』

「そんなわけ無いだろ!」

思わず大声になった俺に、健志は驚いたようだ。


『じょ、冗談だよ』
「…悪い」


気まずい沈黙。


『ま、またな』
「あぁ」




俺は、健志が冗談で言ったのは、わかっていたのに、冷静な対応ができない自分が情けなかった。

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