《MUMEI》

―翌日。


「仲村課長、おはようございます」
「おはよう、五十嵐(いがらし)」

クリーンルームの入口で、洋服の上から白いつなぎの作業着を着ていた俺に、五十嵐 恵理(えり)が声をかけてきた。


俺の仕事は、仕上がった部品の検査だ。

五十嵐は、同じ室内で、その部品の組み立てを担当していた。


「仕事は慣れたか?」
「まだまだですよ〜」


慌てて作業着を着替えながら、五十嵐がはにかむ。


五十嵐は、四月に入社した、新入社員だ。
高卒で、まだ、18歳。
クリーンルーム内で作業する社員は化粧禁止だったが、五十嵐は若いから、十分可愛かった。

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