《MUMEI》

「高山、この店来た事あるのか?」

「うん。たまに」


(へ〜)


意外だった。


「慎は、チャーシューメンだよな」


祐希の言葉に、頷いた。


ここのチャーシューメンは、俺のお気に入りだった。

それは、祐希も同じだった。


少し不揃いな、手打ち麺に、こってり目な醤油味のスープ。
それに、分厚いチャーシューが、五枚も乗っている。

「私も、チャーシューメン」

高山が、手を小さく上げた。


祐希が、カウンターにいる店主のおじさんに、チャーシューメンを三つ頼んだ。

「水持ってくるね」

「あぁ」


高山は、慣れた感じで、セルフサービスの水を取りに行った。


それを見て、祐希が舌打ちした。


「祐希?」
「こんな店嫌だって帰ると思ったのに」
「お前なぁー…」


祐希がこの店を選んだのは、わざとらしい。


(まぁな…)


普通、『お嬢様』なら、嫌がるだろうと思った。


「お待たせ」


俺達は、高山から水の入ったグラスを受け取った。

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