《MUMEI》

「いや、いい」

祐希が高山の提案を断って、拍子抜けしたように、曲を選び始めた。


俺は、まだドキドキしていていた。


「屋代君、これ歌える?」
「歌えるけど…」


それは、さっき高山が歌ったロックバンドのアルバム曲。


祐希の十八番だった。


「歌って」
「何で、俺が」
「私好きだけどキーが低くて歌えないから。
それとも、自信無い?」


高山の言葉に、祐希はピクッと反応する。


そして、渋々と入力した。

「うまいね」
「あいつの十八番だから」

感心した高山に、俺は教える。


「仲村君、もう歌える?」
「え、あぁ」


俺は、曲を選び始めた。

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