《MUMEI》

「何であんな事したんだよ」

女を送って二人だけになった途端、慎が俺を睨みながら訊いてきた。


―あんな事とは、当然、キスの事。


本当の理由を言えない俺は、適当にごまかした。


慎は、不満そうだった。


その後、俺のアパートに行こうと誘ったら、断られた。


(怒らせたかな?)


疲れたと慎は言っていたが、俺は心配になった。


―慎には、嫌われたくないから。


俺には、慎しかいないから。

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