《MUMEI》
自由束縛
 
怠い。
この状態を無気力と人を言うのだろうか?
こんな人生がこの先ずっと続くと言うなら、私は、

私はもう―――


「死にたい、ですか?」


そう。生きてる以上付いてくる数多もの苦痛の柵。そこから抜け出したいのなら、それは死という、人としての終わりを

―――ん?

今、私の気持ちを先読みしたのは誰だ?
私の内に秘めたるこの気持ちを代弁したのは誰だ?

瞳を開く。
いつの間にか、ボックス席の向かいには知らない女性が座っていた。

見た目のままを一言で言うなら、ボーイッシュな女性と言ったところか。
ラフな感じの服、年代物のジーパン。髪はショートカットで纏められている。
少し気になる所がある。
髪…、青い。
染めているのか。
胸は、うん、馬鹿か私は。初対面の女性のどこを見ている。
とにかく、自分が目のつぶっている間にこの中性的な女性は向かいの座席に座ったようだ。

「………何もここに座らなくても、他に席空いてますよ?」

不快感を隠す事無く告げる。
席は空いている。帰宅ラッシュはとうに過ぎ、時期に日が沈む時間になろうとしている。
列車内の客は疎らだ。
わざわざ向かいに座らなくても空いている席は腐る程ある。

と言うか、目と鼻の先に他人が座られると気になって余計疲れる。やめてくれ。どっか行ってくれ。

「死にたいですか?」

「アンタ、頭悪い人か」

物騒な言葉を繰り返す女性。
私は遠回しに「向こうに行け」と言ったのに全く理解しちゃいない。

「貴方は、死が怖くない?」

死が怖くない?………
それには少し、引っ掛かりを覚えた。

「死、か。怖くないね。死ねば怖いと思う感情すら消える訳だ。人はいずれ、死ぬ。死は確定されてる。逃れられないなら怖いって思う感情こそ要らぬ杞憂だよ」

「死よりも、生きて行くのが怖い、貴方はそう思いますか?」

―――ああ思う。
私は生きて行くのが怖い。この辛い毎日が続く事こそ怖くて堪らない。
そうだ、私は明日が怖いのだ。


 

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