《MUMEI》 自由束縛映し出されたのはとある家の中のようだ。 何処か、何処か見覚えがある気がする テーブルに列ぶ豪華な食事。 中心に置かれた大きなケーキ。 この家にとって今日は何か特別な日なのだろうか? TVではビルの屋上から飛び降り自殺と言うよくあるニュースが流れている。 「ねぇねぇ、お母さーん、お父さんまだ帰って来ないの―――?」 その女の子はソファーに座り、足をバタつかせて、 「そうねぇ、自分の誕生日なのにどこほっつき歩いてるのかしら? あの人は―――」 その女性は最後の出来た料理を机に並べて終えて、 あの二人を、あの二人を見間違う筈は無い。 これは……… これは、私の家、だ そうか。今日は私の誕生日。 私自身が忘れているのに、二人とも、律義に覚えていてくれていたのか…。 思い出す。そう言えば朝方、妻に娘に、今日は早く帰って来るよう言われていた。 成る程この為か。ゴメンな、全く気付けなかったよ……… 楽しそうな母子 それは 幼い日の 自分とお袋に 重なって見えた気がした 全力で走る事が好きだった。 途中で横腹が痛くなって足が止まった。少し休んでからゆっくりと歩き出した。 今まで少し焦り過ぎていたのかも知れない。 ゆっくりゆっくり歩く。 マイペースで進めばいい。 親父の大きな手。安心させてくれるお袋の柔かな微笑み。 一生懸命に生きた二人に命を貰った。 ………疲れた? 死にたい? そんな弱音を吐いてばかりいたら両親に申し訳が立たない。 そう、自分も家族を持った。 私は愛する家族を、これからもこの先もこの命尽きるまで、ずっとずっと守っていかなければならないと言うのに。 しっかりしろ、私―――!! ―――トンネルを抜ける 窓には当たり障りの無い景色が流れてゆく。 夕暮れの朱が窓から差し込む。 私は下を向いていた。 もう十分だった。 涙が、涙が止まらないから、止まるまではこうして下を向くしか無かった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |