《MUMEI》
自由束縛
 
それが彼に残された最後の1秒間でした。

今の一瞬で彼は、今日、先程までの出来事が一気に脳裏に蘇って来た事でしょう…。

今日の彼は、仕事が終わると同時に何かを決意したかのように会社の―――ビルの屋上へ向かわれた。
屋上のドアをこじ開け、金網フェンスに攀じ登り、遺書を遺して24階のビルから………身を投げられました。

私の副業である『走馬灯列車』に御搭乗されたのは、地上激突ジャスト1秒前。

彼は死ぬ1秒前に『走馬灯列車』で生きる気力を取り戻したようですね。
しかし残念ながら彼は "自由束縛" になってしまわれました。

『走馬灯列車』で私は死について彼に問いを投げ掛けました。
私の気まぐれと言ってしまえばそれだけですが、けれども私は彼が最後に出した答えに大変満足致しました。

フフフ…、出来れば、彼を助けてあげたかったんですよ?
ですが私はただの『走馬灯列車』の乗務員に過ぎない。
お客様の走馬灯を一緒に見てあげる事しか出来ません。





そうですねぇ………割と、無駄話、好きなんですよ。私。




 

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