《MUMEI》
ようこそ白鳥相談事務所へ
 
 
 
 
 
【二○○五年 9/6 昼】





 
9/6日の午前中
我が白鳥相談事務所内はいつも以上に殺気立っていた

「水町、お茶」

「自分で煎れて下さい」

「あン?」

それは自分でも惚れ惚れするぐらいの即答。
結果、壁側のデスクを陣取り足を行儀悪く乗っけてる社長は今、人を殺しかねない目で俺を睨んでいる。
てかパンツ見えてる。せめて正しく座って欲しいものだ。

「水町、お茶を煎れて頂戴」

さっきより随分と低い声は俺への脅しに他ならない。
だが自分としても今は大量の資料と睨めっこしていて手が離せないからそんな我が儘に付き合うつもりは無いのである。

これも違う。
未だに有意義な情報は見当たらない。
今見終わった資料の一枚を端に束ねられた同じく見終わった資料の山の1番上に置く。
そして次の新たな資料を一枚を手に取る。さっきからこれの繰り返しである。

「ねぇってば。雑用、お茶!」

額に指を添える。おお、頭痛がする。
これ以上社長をイライラさせても何の得にもならないか。むしろマイナスだ。
逆にこっちまでイライラして作業が捗らない。

席を立つ。
渋々を顔に表しながらお茶を煎れに行く。
この際とびきり渋いやつでも煎れてやろうか。

「ねぇー、アタシはアンタの雇い主様よ?
 あんま気が利かないと首にするわよ? ク・ビ」

腕を組んで椅子にもたれ掛かったまま、社長はそんな冗談を言う。
まず机から足を下ろせ足を。
まぁそんな軽口が出るなら俺も軽口で答えてやるしかない。
ごっちゃごちゃしてる社長のデスクの上に、その足首の横にゴトンと今煎れたお茶を置く。

「別にクビにしてくれても構いませんけど、その場合は俺は借金払えませんからね?
 その件で社長に殺されないように警察にでも行って匿って貰いますか」

「みィずゥまァちクゥゥン………アタシに喧嘩売ってるのかなー?
 今なら速攻で買い取ってあげてもいいわ」

指をポキポキ鳴らす社長の目は完全に本気で、余裕は微塵も感じられない。


 

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