《MUMEI》
ようこそ白鳥相談事務所へ
 
「ハァ……」

自分達は今イライラしている。
さっきからこんな調子が続いている。
これは二日前の出来事が原因である。
と言うか、ただ俺達が抱えてる仕事が煮詰まってるだけと言う話なのだが。

自分はもう23時間も寝ずに仕事をしているし、殺人眼で睨む社長でさえ珍しく目の下に隈を作っている。

「社長、今日の深夜に外を見回りに行ったんでしょう?
 何も収穫無かったんですか………」

「収穫なんてあったら今ここに居ないわよ。全然目立った動きしないし、尻尾が掴め無い。
 ―――ただ変なコトしてるバカップル見つけたから小石投げつけてやったわ」

身長160cmにも満たない小柄な社長サンはヤレヤレと大袈裟に両手を回す。

やはり煮詰まってる。
別に社長になんら期待は寄せて無いが、今回の仕事はまず範囲が大きい。

―――ここは、この会社は常識では有り得ない非現実的な現象や事件を主に扱っている。
その非現実的な現象を完全に解決させるまでが自分達の仕事。
会社と言ってもあそこに座ってる金髪のチビ娘が一人で切り盛りしてるだけだ。
今は自分が入ったから二人になったのだが。

「社長、あと1日ですよ?」

社長の机に立てている小さなカレンダーを見ながらそう呟く。

「分かってる。私はプロ中のプロよ?
 期日はキチンと守るわ。だから早くターゲットの根城を見付けて頂戴」

………本気で頭が痛くなった。
見付けてと言われても、簡単に見付かる筈も無く。

「"蒼"め………クソフザケタ仕事回しやがってェ………!」

ガジガジと爪を噛む社長はこの場にいない誰かを睨む。

俺は触らぬ神になんとやらで、そそくさと自分のデスクへと避難し、入口から見ると左奥にあたる場所に配置されているTVのスイッチを側にあったリモコンで付けた。
 
 
ガジガジガジガジと社長の爪噛み音が響き渡る午前11時
まだ夏の名残が残る、少し暑いこの日。
事務所にクーラーは無く、一台の扇風機が一生懸命首を振っている。





この話の発端は、そう…二日前に遡るかな




 

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