《MUMEI》
ようこそ白鳥相談事務所へ
 
俺は内藤さんをこの目で見た事は一度も無い。直接会ったりとかはしてなくて内藤さんとは社長を通じて電話で知り合った。
そしてこんな感じに内藤さんを毛嫌いしている社長は彼女を"蒼"と呼ぶ。
前に「何で蒼って呼ぶんですか?」と社長に聞いたら「髪が蒼いから」と大変簡潔に教えてくれた。

にしても、今の社長の言動は少しイタダケない。
内藤さんは俺達に仕事を回してくれる言わばお得意様だ。
俺は頬を掻きながらそれとなくオブラードに包んだ感じで社長に注意する事にした。

「仕事を回してくれてるんだから文句や悪口を言ったらバチが当たりますよ」

「………アンタ、前回アイツが回した仕事で左腕無くしたの忘れてるんじゃ無いでしょうね?」

言われて、身体に一瞬の寒気が下から上へ通り過ぎた。

咄嗟に右腕で左腕を掴む。
今、左腕は付いている。確かに付いている。
神経も繋がっているし、特殊な加工技術とか言うやつにより外観は全く以前と変わらない自分の左腕。
だけどこれは義肢だ。元から着いてあったオリジナルは半年前に肩口付近から綺麗に消滅してしまっている。

「まさか………あんな後味の悪い仕事、忘れる訳がありません」

自分は忘れない。
社長だってあれは忘れられない仕事になった筈だ。

「フン、まぁ良いわ。
 とにかくアイツさっき電話口でクソフザケタ事吐かすから、こちとら滝ような落差と勢いでテンションが下がった訳よ」

ムキー!と猿のような奇声を出す社長。
むしろテンションが上がってるように見えるのは自分の目が疲れているからだろうと適当に納得した。
社長をからかうのが好きと内藤さんは以前話してたから、きっと電話口で良いようにからかわれたに違いない。

取り敢えず先を促しておこう。

「なんて言われたんですか?」
 
 
 

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