《MUMEI》
ようこそ白鳥相談事務所へ
 
 
「社長のポリシーは良く知ってますよ。痛い程に。
 ところで蒼さんが回してくれる仕事の詳細はまだ来ないんですかね?」

「さぁ? もうすぐ来るんじゃ―――」

言った側から備え付けのFAXがガガガガガと不快な音を立てる。
それを聞くや否や、遠足に行く幼稚園児のような軽やかさでFAXから出された紙切れ一枚を手に取る自分。呆れた感じで見てる社長の視線など気にしない。

内藤さんは少しランクの高い仕事を回してくれる。自分としては嬉しい限りなのだが、前回のは確実にAの仕事だった。
自分は死にかけた。社長もだ。
流石にあれぐらいの高レベルの仕事はあれっきりにして欲しいと願いたい。

―――期待を膨らませてプリントに目を通す。
そこにはこう書かれていた。

 
【来栖市における行方不明事件の解決】 ランクC相当

―――簡潔に書きます。
最近、行方不明事件が頻繁に起こっているのをご存知ですか?
現場に残った小さな血痕、唾液、体毛等を調べた結果、どうやら獣型の魔物のようです。
攻撃方法や能力等は分かりません。
しかし高速移動が可能な獣型と判断しました。
狩った獲物をその場では食べずに巣に持ち帰っています。
騒ぎにならないようにその付近では二度目の狩りをしていません。狩る量も少なく、人目がつく場所等には出現しません。
察知して現場に向かっても既にターゲットが消え去った後が全部で中々尻尾が掴めません。
しかし私は三日かけて巣の目星を付けました。
ターゲットは学びやを根城にしています。
私は範囲を来栖市に絞り込む事に成功しました。
しかしどの学校かまでは解りませんでした。
アナタ方の仕事はターゲットの根城の発見及びターゲットの消滅です。
 
では来栖市内の小、中、高、大の学校のデータを送ります。
そこからターゲットの根城を捜し当てて下さい。

期日 9/7日まで










「……………………」

プリントを持つ指が震えてる。
FAXは休む暇無く紙切れを量産していく。
え? なに? 来栖市内の全学校を? 探せと? いつまで?

―――9月7日

今日は9月4日ですよ?
内藤さん? 内藤サ―――ン!


 

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫