《MUMEI》
ようこそ白鳥相談事務所へ
 
 
「そうね、怪しさ85パーぐらいかな
 もしかしたら行けば何かイイコトあるかもね」

ペロッと自身の指から零れ落ちる血を舐め上げ社長は笑う。
内藤さんの話では、ターゲットは人目がつくとこでは狩りをしないそうだ。
なら普通学校なんて狙わない。

社長の勘は恐ろしく当たる。
かなりの確率でターゲットはそこを根城にしている筈だ。
用務員を襲ったのは食欲を我慢し切れなくなったからか。
だとしたらそれがターゲットの最後のミスになった。
そして俺達には最大にして最高の好機。
居場所さえ、ターゲットさえ捕捉出来れば小さな金色の滅師の腕の振るい所である。

俺はまだ未読みのプリントの束から蔵前高校のデータが書かれた一枚を取り出す。
そして核心した。

間違い無い。ここには何かが存在している。
部活で帰宅が遅くなりがちな生徒達が最近こぞって校舎から獣の遠吠えみたいなものを耳にすると学校側に訴えてるそうだ。
生徒だけじゃなく数人の先生も耳にした事があるらしい。
原因は不明。探して見ても校舎内に犬なんて紛れ込んで無かったそうで風の悪戯みたいな理由で片付けられていた。

「今からこの学校に行ってきますよ。
 社長はどうしますか?」

「頃合いになったら行くわ」

それまでは寝てるとか言って社長はラノベを顔に被せて寝てしまった。
まぁ、動き出すのは日が暮れてからだろう。
社長程の身体能力が無い自分は交通手段が限られている。
今から行かないとその "頃合い" に間に合いそうも無い。

「ムニャ………水町。ちゃんとアタシの鯨姫持って行きなさいよ………」

「ハイハイハイハイ」

「………ハイは一回」

「ハイ」

そんな天然漫才をしつつ、俺は棚の上の二番目の引き出しから布に包まれた長細い何かを取り出した。
ゴトンとデスクに置く。
かなり重いこの中身は現代社会に不必要な物。

殺し殺される道具。剣。


 

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