《MUMEI》
違う…よな?
―俺達が東口に着いた時。

丁度、ロータリーから救急車がサイレンを鳴らしながら出て行った。


警官達は、公衆トイレに入って行く。


トイレの周りには、野次馬が集まりつつあった。





「何かあったんですか?」

無言の俺にかわって、祐希がその中の一人に話しかけた。


いかにも、好奇心旺盛風な、中年のおばさんが、ペラペラ話し出す。


「女の子が障害者用のトイレで襲われたらしいわよ〜。怖いわね〜」


「じゃあ、さっきの救急車は…」


「チラッと見たけどね。
あれは酷いわよ。

髪と顔切られてたし…。

犯人、逃げててまだ捕まってないみたいよ。
この辺も物騒になったわよね〜」


おばさんはまだ喋り続けていたが、俺の耳には届かなかった。


女の子。

髪と顔。


(…違う)


高山の、筈はない。

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