《MUMEI》

(だって…)


待ち合わせ場所は、西口だ。

高山のマンションは、西口側だ。

東口に来る筈はない。

高山は、以前、祐希のパンチだって受け止めた。

そんな、一方的に襲われるなど、ありえない。


(でも…)


俺の携帯には、未だに高山から連絡は無い。


(無い、けど…)


「違う、よな?」


俺は、震える声で祐希に問いかけた。


「慎?」
「高山じゃ、無い、よな?」


声どころか、体まで震えてきた。


そんな俺を、祐希が抱き締める。


「祐希、ここ、人前…」
「大丈夫だ」


抱き締める腕に、力が入る。

しかし、それは一瞬で、祐希はすぐに離れた。


「祐希?」
「高山が、そう簡単に襲われたりするかよ」


そう言って、笑顔で俺を励ます。

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