《MUMEI》
呼び出し
―翌朝。


俺は、祐希のアパートで、二人で朝食を食べていた。

「一休みしたら、家まで送るな」
「いつも悪いな」
「いや、本当は帰したくないけどね」
「…ちゃんと仕事行けよ」

悪戯っぽく笑う祐希を、睨みつけると、祐希は無言で頷いた。


祐希は今日は遅番で、午後から出勤する事になっていた。


「もう、大丈夫?」
「あぁ」


俺の頬を撫でる祐希の手。

(大きくて、安心するな…)

俺は、うっとりと目を閉じた。


祐希の唇が、軽く、俺の唇に触れてきた。


チュッと音を立て、すぐに離れる。


「駄目だよ、慎。俺を誘惑しちゃ…」
「してない」


俺は、目を開いて、まっすぐ祐希を見つめた。


「またそんな目して…」
「してないから!」
「はいはい。また、…今度、だろ?」
「…っ、あぁ…」


(何だよ…)


こっちが祐希の色っぽい声にドキドキしてしまった。

俺は、祐希の車の中で、気持ちを落ち着かせるのに必死だった。

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