《MUMEI》

「ありがとな、仕事頑張れよ」
「あぁ、またな」


俺は、祐希の車を降りた。

祐希はいつも、自宅近くの大型スーパーの駐車場まで送ってくれる。


…さすがに、自宅前は困るから、俺が降ろしてくれと頼んでいた。


「ただいま〜」
「おかえり、お兄ちゃん、電話」


帰宅早々、昨日の遅刻の原因に声をかけられた。


「電話?誰から?」
「高山さん」


(高山?!)


俺は慌てて電話を替わった。


「もしもし、高山?」
『もしもし』


…?


それは、聞き覚えの無い声だった。


「?あの…」
『仲村先輩ですよね? 私、志穂の妹の、貴子です』

「はぁ…」


俺は、高山の妹とはほとんど面識が無かった。


『突然すみません。今から言う場所に来てほしいのですが…』

「え…」


その場所に、俺の昨日の不安が蘇ってきた。


「あの…」
『そこに、姉がいますから』
「…わかった」


俺は、電話を切った。


(そうだ…)


俺は、朝刊に目を通す。


(あ…れ?)


そこに、俺の知りたい記事は無かった。


(何で…)


疑問を抱えつつ、俺は、高山の妹に呼び出された場所に向かった。

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