《MUMEI》
病室
貴子さんに案内されたのは、廊下の一番端にある病室だった。


大さんとは、診察があるからと、すぐに別れた。


入口には、『高山志穂』というプレートが入っていた。


「個室なの」


貴子さんが告げた。

ガラッ

「お姉ちゃん、仲村先輩来たよ」


貴子さんは、ノックもせずに入って行った。


俺は、戸惑いながら、その後に続いた。


「…」


「仲村君…」


俺は、…言葉が出なかった。


「ごめんね?昨日は行けなくて」


高山は、いつもと変わらぬ口調、笑顔だった。


…その姿だけが、いつもの高山では無くなっていた。

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