《MUMEI》

短く切られた、髪。
左頬には、大きなガーゼ。
右腕に刺された、点滴。


「お前、…」


それは、昨日東口で野次馬のおばさんに聞いた『被害者の女の子の特徴』、そのものだった。


「大した事ないのよ、大丈夫」


(大丈夫じゃ、ないだろう)

女の、髪が。

女の、顔が。


「跡とか…」
「うん、残るらしいの」


また、高山が笑う。


(何で…)


そんな、他人事のように笑うのか。


俺は、わけがわからなかった。


「そんなわけで、カラオケは、退院してからね」
「あぁ…」


ベッドに座る高山よりも、俺の方が、病人みたいな声を出していた。


「じゃあ、私、仲村先輩送ってくるから」
「うん、お願いね」


俺は、貴子さんに腕を引かれ、退室した。

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