《MUMEI》 そこから、高原の態度が豹変した。 高原は、高山に『自分にとって従順な嫁』でいるよう強要してきた。 高原の命令を高山が拒むと、容赦なく暴力を振るった。 後で調べてわかった事だが、高原の亡くなった父親が、そういう人物だったようだ。 「地元から離れて、本性を現したのよ」 と貴子さんは言った。 高山家は、地元ではかなり力を持っている。 そんな有力者の娘に暴力を振るえば、高原の身も危うくなる。 だから、高原は、地元では何もしなかった…できなかったのだ。 実際、転勤は高原本人の強い希望だった。 そして高原は、高山の浮気も心配していた。 俺も貴子さんから写真を見せてもらったが、高原の容姿は、お世辞にもいいとは言えなかった。 若く、美しい高山が、自分のような中年男を本当に愛しているのか― 高原はそんな不安から、高山の外出を禁じた。 それどころか、高原の留守中は、高山に居留守を使えと命令した。 異常な束縛。 日常的に繰り返される暴力。 それが周囲に発覚したのは、そんな生活が一年以上続いた頃だった。 前へ |次へ |
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