《MUMEI》

初めて、ちゃんと声を聴いた気がする。


学校の先生は、二階堂君に当てようとしないし、

二階堂君が誰かと喋ってるのも、見たことないし…


透き通った、柔らかく、落ち着いた声。


…でも、最初に聴いた言葉が『誰?』って…


少しショック。


だけど、いつも無表情の彼の眉根が寄って、
少し困ったような顔になったのが、なんだか嬉しかった。



あたしが名乗ろうとすると、
彼はあたしの答えに興味などないという風に、
背を向けてすたすたと歩き出した。


せっかく喋れる機会を失いたくなくて、

あたしは慌てて後を追った。

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