《MUMEI》 晴二階堂君がいきなり「学校行く」って言い出すから、焦った。 「え!?雨降ってるよ? 二階堂君、傘は??」 慌てて訊ねると、 彼はゆっくりと手を伸ばし、 白く、華奢な人差し指を、空に向けた。 「…あと10秒で、止む」 「…え??」 あたしは、いそいで空を見上げた。 ざあざあと降っていた雨が、 さあさあ、 ぱらぱら… すこしずつ、弱まってきた。 ただ驚いて、 あたしは息をのんで、その光景を見つめた。 二階堂君が歩き出す。 彼が神社の屋根の外に出たとき、 雨が、止んだ。 「…うわあ…!!」 あたしも立ち上がり、屋根の外に出ると、 両手を広げて空を仰いだ。 「すごいね!!!」 歩いていく二階堂君に声を掛ける。 追いつこうと、駆け出したその時。 べしゃ。 足が滑って、転んでしまった。 恥ずかしくなって、慌てて二階堂君を見る。 …今の、見られてませんように!! でも、期待も虚しく、 二階堂君は転んだあたしを見下ろしていた。 うわあ…最悪… 真っ赤になって俯く。 「…ふっ」 見上げると、目を細め、小さく笑う二階堂君の顔。 …初めて見る、彼の笑顔。 体中が、ほわんとした優しさに包まれるような、 ―…柔らかな笑顔。 なぜだか、涙が出そうになって、 あたしは空を見上げた。 すると… 「―…二階堂君!!!…見て、みて!!」 二階堂君が、あたしの指差す方向を、 …空を、見上げる。 「…虹だよ…!!!」 雲の切れ間から、 七色に輝く虹が、架かっていた。 「…二階堂君が、虹、架けたみたいだね!!」 二階堂君を振り返って言うと、 いつもの無表情に戻った彼は、 くるり、と向きを変えて、神社の出口へと向かっていってしまった。 「あれ?二階堂君!?」 呼び止めても、振り向いてくれない。 怒っちゃったかな… 「…あ」 あたし、くつ履いてないじゃん… …何で??? ってゆうか、 あたし、何でここにいたんだっけ…?? 「………??」 あたしは、一人首をひねった。 前へ |次へ |
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