《MUMEI》
父親視点
テレビや雑誌では見てはいたがあまりの成長ぶりに眼が釘づけになった。





最後に会ったのは裕斗の17のバースデーの日。





あの日は二人だけで食事をした。





その頃の裕斗はとても17には見えない、子供の色の濃い小さな少年だった。




しかも身だしなみに無頓着。




寝癖がいつもあって、いつも同じパーカーにジーンズ。
見かねて食事の帰り行きつけの店で洋服を山の様に選び押し付けた。






今眼の前にいる俺の息子…。



生意気に煙草を吹かし酒を飲む。




会えばバカの一つ覚えみたいにミルクティーしか飲まなかったくせに、グラスを傾ける仕草に慣れさえ感じる。





いや、息子と一緒に酒を飲むのは夢にまでみた光景。





突然陸に無理矢理ハワイへとせがまれ来たが…まさか偶然にも再会出来るとは…。



「写真集はいつ出るんだ」




「まだまだ先です、他の場所でも撮るらしいから」




「そうか、出たら必ず買うよ」





裕斗は頷く代わりの様にライターを向けてきて、俺はまた煙草を吹かしだした。





顔だちがすっかり変わった。




しかし俺が若い頃とは全く違う。




恭子の日本人離れした美しさが強く全面に出てきた。






我が息子ながら綺麗だと…みとれてしまいそうだ。





すっかり長くなった手足、見覚えのあるブランドのシャツ、


胸元に光る安物ではないアクセサリー。




顔の表情や仕草にも色気を感じた。




生意気に…おそらくたくさんの恋も経験しているのだろう。





「滞在中時間に余裕はあるのか?食事でもしないか」




「それは又の機会にしませんか?、折角恋人と過ごしている所を…
邪魔したくありませんから」

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