《MUMEI》 キミとの出逢い。盲導犬の卵を預かり、一年間大切に盲導犬のマナーを卵に教える。 別れの時は寂しくて悲しくて、涙が出そうになっちゃうけど、君と過ごした日々は変わらない。 それがパピーウォーカー。 私の家はパピーウォーカーだった。 「きゃーっ!!!!カーワーいーっっっ!!!!」 平成17年。 キミと僕との出逢い、だった。 「沙羅、貴方が名前を決めなさい」 白いラブラドールレトリバーの大きな仔犬は、白い毛をよりいっそう耀かせて、庭を跳び跳ねている。 お母さんの声を聞いた私は、歓喜の声を洩らした。 「えーっ!!いいの〜!?やった〜っ!!」 地面をけりあげ万歳をしたあとで、私は考えた。 盲導犬だよね…。 そうだ! パァン! 私は手を叩いた。 「イルカ!イルカだ!!」 お父さんとお母さんは顔を見合わせた後、驚いた顔で私の方を見た。 「どうしてイルカなんだい?」 お父さんの質問に、私は迷うことなく答えた。 「盲導犬クイールの話、知ってるよね?だから、クイールの『イ』と『ル』を取ったの!クイールみたいな盲導犬になって欲しいって願いを込めて!!それに…」 私は、お座りしてきょとんとしている卵の耳を指さして、言った。 「この子にも模様があるんだよ。場所は違うけど」 そのたれた耳には、黒い斑点が付いている。 お母さんとお父さんは少しだけ言葉を交わしてから、私に言った。 「いいわ。この子の名前は、イルカ。」 「大切に、育てるんだぞ。盲導犬のマナーも教えなくちゃならんしな」 私とイルカの出逢い。 「お父さん、お母さん、ありがとう!!」 別れの時を考えたら、 寂しすぎる。 だから。 今を精一杯楽しもう、 ね、イルカ。 これからよろしく、 イルカ。 次へ |
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