《MUMEI》
誰?
高山が入院して一週間が過ぎた。


季節は、夏から秋になろうとしていた。


俺は祐希と高山の見舞いに来ていた。
ちなみに、祐希は今日初めての見舞いだった。


コンコンッ


「どうぞ」

高山の病室から、低音の美声が響いた。

「「お邪魔…します」」

俺と祐希は、恐る恐る入室した。

(今日も眩しいなぁ…)

美声の主は、高山の兄の大さんだった。
丁度、様子を見に来ていたらしい。


「…おい。何だよ、あの美形の医者は」
「高山のお兄さんだよ」

しばらく言葉を失っていた祐希が、小声で俺に質問してきたので、つられて俺も小声で答えた。

「いらっしゃい、仲村君。こちらは?」
「あ…えと…」

俺が、どう言おうか迷っていると…

「慎の親友の屋代です。はじめまして」

と、祐希が好青年風に、自己紹介した。

「そう。はじめまして。志穂の兄の大です。ゆっくりしていって下さい…仲村君もね」
「「は、はい」」

俺達は、二人同時に返事をした。

大さんは、高山のベッド脇にある椅子から立ち上がると、高山の頭を優しく撫でた。

「じゃあ、志穂。またな。
何かあったら、ナースコールを押しなさい」
「ありがとう、兄さん」

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