《MUMEI》

高山と大さんは似てないから、まるで恋人同士のように、絵になる二人だ。


うっとりするような笑顔を振り撒きつつ、大さんは部屋を出ていった。


(は〜)


大さんの美貌は浮世離れしていて、俺はいつも緊張してしまっていた。


「今日は、屋代君と一緒なのね」
「あぁ、こいつも気にしてたから」

これは、半分嘘で、半分本当。

祐希は、確かに高山を気にしていたが、俺が貴子さんに言われた事を実行するところを見たいのだ。


「…髪、短くなったな」

祐希は顔の傷には触れずに、何気ない口調で高山に話しかけた。

高山の左頬には、以前のような大きなガーゼではなく、傷跡を隠すように絆創膏が貼られている。

「うん。暑かったし、丁度いいわよ」

高山も、明るく答える。

俺が初めて病室を訪れた時は、不揃いだった髪も、美容師に来てもらい、きちんとしたショートヘアになっていた。

そのせいか、以前よりも、若く見える。

(そういえば、昔の高山の髪型はこんな感じだったよな)

俺は、何となく、中学時代を思い出していた。


「痩せたんじゃねぇ?」
祐希が、何気なく訊いてきた。

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